ロケット推力計算機 (Thrust)

エンジンの設計・性能評価に必要な推力を物理学的に算出します。

基本パラメータ

圧力補正 (オプション)

推力計算結果

ロケットの「推力」とは?

推力(Thrust)とは、ロケットエンジンが推進剤(燃料と酸化剤)を高速で下方に噴射することで生み出す、上向きの力のことです。これはニュートンの運動の第3法則「作用・反作用の法則」に基づいており、何かを後ろに投げることで自分が前進する力を得ています。

ロケットが地面から離陸するためには、エンジンの推力がロケット全体の重力(重量)を上回る必要があります。この比率を「推力重量比(TWR)」と呼び、打ち上げロケットの設計において極めて重要な指標となります。

推力方程式の構成

ロケットの全推力は、大きく分けて2つの要素から成り立ちます。

F = ṁ × ve + (pe - pa) × Ae

1. 運動量推力 (Momentum Thrust): ṁ × ve

質量流率(1秒間に噴射する質量の合計)と、噴射速度の積です。推力の大部分はこの要素によるもので、大量の推進剤をより高い速度で噴出させるほど、推力は大きくなります。

2. 圧力推力 (Pressure Thrust): (pe - pa) × Ae

ノズル出口のガス圧力と周囲の大気圧の差による力です。ノズル出口の断面積が関与します。周囲の圧力が低い(高度が高い、または真空)ほど、この項の値は大きくなり、全推力が増加します。

真空推力と海面推力の違い

同じエンジンでも、地上(海面)で動作させるときと、宇宙(真空)で動作させるときでは推力が異なります。理由は上記の方程式の pa (周囲圧力) にあります。

  • 海面推力: 周囲圧力が約 101,325 Pa(1気圧)あるため、出口圧力との差が小さくなり、全推力は低下します。
  • 真空推力: 周囲圧力が 0 になるため、圧力推力が最大化され、全推力が地上よりも数%〜十数%向上します。

このため、ロケットエンジンのスペック表には通常「Sea Level」と「Vacuum」の2つの数値が記載されています。例えば、SpaceXのRaptorエンジンやラザフォードエンジンなどは、この差が顕著です。

推力と比推力 (Isp) の関係

「推力」はエンジンのパワー(馬力のようなもの)を表しますが、「比推力 (Isp)」はエンジンの燃費(効率)を表します。推力が大きくても、膨大な燃料を一瞬で消費してしまうエンジンは長時間航行には向きません。

推力、質量流率、比推力の関係は以下の簡略式で表されます。

F = ṁ × Isp × g0

この式から、一定の推力を得るために必要な推進剤の量(ṁ)は、比推力が高いほど少なくて済むことがわかります。化学ロケットは大きな推力を出せますが燃費が悪く、イオンエンジンは燃費が非常に良いですが推力は紙1枚を持ち上げる程度しかありません。

ノズル設計と適正膨張

エンジンの効率を最大にするには、ノズル出口の圧力(pe)を周囲の圧力(pa)と一致させることが理想的です。これを 適正膨張 (Optimum Expansion) と呼びます。

  • 過膨張 (Over-expansion): pe < pa の状態。地上近くで高度用(大型)ノズルを使うと発生し、衝撃波による損失やエンジンの損傷を招くことがあります。
  • 不足膨張 (Under-expansion): pe > pa の状態。宇宙空間で小型ノズルを使うと発生し、まだ膨張して加速できるガスがそのまま放出されるため、エネルギーがもったいない状態です。

打ち上げの段階によって周囲の圧力は絶えず変化するため、ベル型ノズルは常に最高の性能を出し続けることはできません。これを解決するために「エアロスパイクエンジン」などの可変膨張エンジンも研究されています。

実例:有名なロケットエンジンの推力

エンジン名 推力 (Vacuum) 主な使用ロケット
F-1 約 7,770 kN サターンV (第1段)
RD-180 約 4,150 kN アトラスV
Raptor 3 約 2,800 kN スターシップ / スーパーヘビー
LE-7A 約 1,098 kN H-IIA / H-IIB

この計算機を使用して、ロケットエンジンがどのように力を生み出し、環境によってその性能がどう変わるのかを検証してみてください。高度なミッションの成功は、正確な推力計算から始まります。